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このブログは、個人の趣味により発足するものです。
内容はオリジナルの小説、日記などを予定しております。

また、このブログに記載する小説の著作権はすべてトクナノゾムにあります。
無断での転用、転載、模倣はご遠慮ください。(フリー配布はこれに該当しないものとします)

倉庫blogになりました。
思い出したように時折話を積み重ねます。

おやすみなさい。いままで、たくさん、ありがとう。だいすきです。


パンドラ*ボックス34 [オリジナル小説]

※この小説はフィクションです
 実際の事件、人物、団体とは関係ありません
※この小説には粗暴、下品であるなどの粗悪な描写が含まれます
※この小説には暴力、流血などの残酷な描写が含まれます
 
 以上の注意を踏まえ、それでもよろしいと言う方だけご覧ください




















「あ、キィさんだ」
「キィさん?」
「キィさんこっちこっちー!」
「ほら、キィさん来たよ」
「キィさーん!」
「ウザイ黙れ寄るなガキ共。僕は病み上がりなんだよ」
ねえお前ら遠慮って言葉知ってる?毎日スクラップ置き場で鍛えた目ざとさのせいかどうかは知らないが、こちらから声を掛けるまでも無くガキ共に取り囲まれた。まったく、見た目は僕とあんま変わらないくせに、ワイワイキャーキャーと騒がしい連中め。ベタベタ触んな金取るぞ。
「悪いけど、そこのネコ持ってくよ。どうも僕の所有物らしいから」
「えー!」
「えーじゃない。玩具なら別のを自力で探せ」
「だってコイツ、すぐ鳴くから面白いんだよ」
「・・・もしかして、遊んでたんじゃなくて虐められてたわけ・・・?」
悪ガキ集団とは言え、子供相手に?・・・もうこれ、実は別の人形だろ。
「とにかく、お前らクソガキ風情が僕の所有物盗ろうなんざ百年早いの。もういいからどけ」
はい散った散ったー。自分とほぼ同サイズの人混みをかき分けかき分け、もう半分泳いでるような気分で進んだ。いやはや我ながら惚れ惚れしそうなモテっぷりですな。最終的には飛びついてきたガキを2、3かわして、ようやくチェコ前でたどり着けた。逃げるかなあとか思ってガッシリ髪を引っつかむ。イェッサー、一匹目捕獲完了でありますお疲れさんでしたー。
「ギニャ!?い、痛いれす・・・」
「だろうねえ。痛くなるようにつかんだからねえ」
「あだだだだだだだァっ!」
ふははははは。
「うわ・・・キィさんめっちゃ良い笑顔だ」
「サド・・・」
「うっさい苛めっ子共。・・・いやしかし、見事に腕にはノーリアクションだなお前ら」
「同情すると思った?」
「いや、怯えて泣き叫ぶかと」
泣き叫ぶまでは冗談だけどさ。普通腕無くなってりゃ何かしらのリアクションには期待しますよ。
「まあ、割と有名だよ。キィさん、自分が何日寝てたと思ってんの?」
「ああ、やっぱ何日も寝倒してたんだ・・・」
こりゃますますモグラのトコ行かなきゃかな。
「モグラ!?」
ポツリとつぶやいた声に、声を揃えて一斉に振り向いた。


パンドラ*ボックス33 [オリジナル小説]

※この小説はフィクションです
 実際の事件、人物、団体とは関係ありません
※この小説には粗暴、下品であるなどの粗悪な描写が含まれます
※この小説には暴力、流血などの残酷な描写が含まれます
 
 以上の注意を踏まえ、それでもよろしいと言う方だけご覧ください



















ワインと片腕の重さに揺れながら、壁に沿って歩いた。久々にホロズウェルを濡らす雨は随分やわらかくて暖かい。これで地面さえぬかるまなければ打たれていくのも気持ちが良いんだろうな。屋根の隙間から見る景色も中々悪くないものだった。
とは言え、このままブラブラし続けたら、さすがに病み上がりの身体に良くないだろ。体中がやけにバキバキ言うし、何日も眠り続けてたのかもしれない。起き抜けのハードな運動の事は抜きにしても。だったら、早いところ人形2体をとっとと回収して帰るのがベスト。幸いと言うか何と言うか、チェコの方は既に行動パターンが読めてきたしね。どうせ今頃はけろっとして適当な所でニゃーニャー鳴いてるに違いないから、まずはそっちか。これですぐ見つかるようなら、あいつの性格、単純に決定。
シビアに物を考えるのは街の気質として、ここまで簡単に、腕を片方失った事、居候が増える事を受け入れられるのは我ながら可笑しいとは思う。思うんだけど、こればっかりは染み付いてしまってて治し様が無い。諦めが良すぎることで損した事があるわけでもないし、まあ良いかなと、初めて自分で自分に妥協したのは、もうずいぶん昔の話。人生、本気の本気で諦められないものなんて、無いんだろう。きっと。――腕にしろ、ララにしろ。
そもそも、僕の人格形成の大半は、ララと家族がしたようなものだと言って良い。僕も結構良い環境で育ってきたもんだね。まったく涙が出ちゃいそう。半分ジョークで半分本気。オイオイ誰に向かったジョークだよって、まだ大分寝ぼけてるのかも。もしくは早くも疲れが出たか。ついでに欠伸も。寝続けてたのにまだ眠くなるって・・・あれ、普通か?
どうでもいいことをリフレインさせ続けながら歩いていると、いつの間にやらスクラップ置き場までやって来ていたらしい。
ただでさえグチャグチャの山が今まで以上に雪崩れているのを見たら、さすがに登る気も失せたね、こりゃ。錆びてベコベコに変形したバケツに腰を下ろして、ぼんやり辺りを見回す。あれだけの騒ぎにも関わらず、廃品の山をかき分ける人影に変わりはなさそうだ。子供以外は、ひび割れた手足をこすりながら、あるいはどこかを引きずりながらモソモソと緩慢に動いていて、それがまた眠気を誘うんですけど。こんな毎朝の風景から非日常を強いてあげるなら、手前の一角でガキ共が群れを成して何かデカい人形を囲んで回ってることとかかね。まったく、朝っぱらからニャーニャーニャーニャー・・・・・・・・・・・・?
・・・あー、単純決定だこりゃ。


パンドラ*ボックス32 [オリジナル小説]

※この小説はフィクションです
 実際の事件、人物、団体とは関係ありません
※この小説には粗暴、下品であるなどの粗悪な描写が含まれます
※この小説には暴力、流血などの残酷な描写が含まれます
 
 以上の注意を踏まえ、それでもよろしいと言う方だけご覧ください


















「いやもう本当・・・なんで喧嘩してたの?って感じなんだけど」
「喧嘩なんて大抵そんなもんだろ」
ホレ、コレも持ってけ。という声に振り返れば、間髪入れずに顔面目掛けてワインが飛んできた。愛が無いね。もしかして根に持つタイプ?キャッチしたワインを弄ぶ手も慣れたもので、一体何万回やったやり取りなのかと、自然と笑みがこぼれた。何だかんだで、僕はこの家を、家族を愛してる。照れ隠しにワインを適当に入れ替えてやった僕は、別に何も悪くない。・・・と思う。
「しっかし、また派手にちらかしちゃったね」
「お前は部屋が2階だからそんなに気楽なんだ。おかげで今夜は店が開けねえ」
「2階って言うか屋根裏だし。年中開店休業中の間違いだろ」
「年中絶賛開店休業中だ」
「絶賛してるの身内だけじゃん」
ぐるっと指をさして回った先には、あのまま伸びたり酔いつぶれたりと、見目麗しくないオッサンの集団。喧嘩の後は、よくわからないまま酔いどれパーティーになってしまって、出発がだいぶ遅れた。それでも戻ってこないって言うんだからもうあの人形共ほっぽっといても良いような気もするけど、そこはそれ、使えるものは何でも使うが信条のスラムっ子の血が騒いじゃったんだから仕方ない。ま、せいぜいこき使ってやるさ。
「・・・腕、どうせモグラの仕事でしょ?あいつらこんなに酒飲まないと思うんだけど」
「ブチブチ言うなや。帰りに寄って診てもらえ」
「へいへい。まさかとは思うけど、治療費コレでごまかす気?」
「・・・・・・」
ビシッと父さんが凍りつく。いくら年中地下にこもってるとは言え、あいつらだって一応医者なんだからそれは無いと思う。ホロズウェル唯一――少なくとも、僕は他に医者を知らない――と言っても過言ではないモグラは、サザリさんも気付かない場所にこっそり地下医院を構え、ひっそりと人間をくっつけたりバラしたりし続けている親子3人組みの変態医者の通称である。変態とは言え他にいないわけだから、地元のゴロツキも中々敬意を払ってる・・・と思ったのは僕の気の所為なの?もしかして、医者はホロズウェルの外じゃ地位低いの?って言うかいつまで続くんだこの嫌な間は!
「・・・冗談だったんだけど?」
「ウチ一番の上物だぞ?ばっちりお前の腕分の価値はある!」
「僕の身体ワイン以下!?もう知らないっ、こんな家出てってやるんだから!」
「行け行け、せいせいすらあ」
テンション上がって、ついふざけた調子で家を飛び出した。・・・ところを目撃され、また口封じのためネチネチと三下っぽい盗賊を虐めてまた出発が遅れてしまったけれど、やっぱり僕は悪くない。帰ってこないあいつ等が、全部悪いに決まってる!


パンドラ*ボックス31 [オリジナル小説]

※この小説はフィクションです
 実際の事件、人物、団体とは関係ありません
※この小説には粗暴、下品であるなどの粗悪な描写が含まれます
※この小説には暴力、流血などの残酷な描写が含まれます
 
 以上の注意を踏まえ、それでもよろしいと言う方だけご覧ください

















話し上手で比較的まともな兄さんの話をまとめると、こういうことになる。
「つまり――あの後なんかもう気付いたら人形2体が完全に記憶喪失で僕のことをご主人様呼びしてて面白そうだったからって連れて帰って使ってる、と?」
「おう」
「はい次の説明係!」
「何でだ!?ちゃんと分かってる範囲内の事は説明したぞ!?」
「むしろあの説明であんなに自信に満ちた顔をしていた兄さんが理解できません。弟の腕一本丸かじりするような危険物連れて帰るなよ!しかもそんなふざけた理由で!」
どうなってんだよこの家は!責任者出て来い。ドタマかち割ってやりゃ少しはましになるだろう。
「責任者っつーと俺か」
「よし来た父さん、歯ァ喰いしばれ」
「殴っちゃイヤンっ。乙女の顔は全世界共有の財産よン」
「着替え速ッ!じゃなくて、僕は開店時間前に女扱いしないっていつも言ってるだろ!」
「じゃあ仕方ねえ、軽くヒネッてやるか」
「ギャーっ!合金製のフライパンが!チクショウかなり良いやつ拾ってきたのに!」
「ギャハハハハ!俺の相手しようなんざ百億年早え!」
「うっさいクソ親父!今日こそ沈めてやる!」
やれやれやっちまえ!とあちこちから上がる掛け声をゴング代わりに、ケンカという名の祭りが始まった。男所帯ってろくなモンじゃない。普段の職業はアレでも、うちの家族は血の気が無駄に余ってるのかね?フライパンノックダウン、ついでフライングキック、とどめに本日二度目のフライパンラッシュビートと流れるような連続技を浴びせるも、片腕になったハンディキャップは大きかった。アンバランスな左右の重みについよろめいてしまい、前につんのめる。かわすのだけなら何とかできるか?挑発に乗せた兄さん達が一斉に殴りかかってきたところをしゃがみこんで避ければ、派手に頭上でクラッシュするのが分かった。よっしゃ、作戦成功。隙を見て脚の間をすり抜け、息を整えた。ホントにみんな元気有り余りすぎ。前回の戦いでもコレくらいはしゃいでれば楽に勝てたんじゃないの?無邪気にはっちゃけ続けるオッサン達の手を、脚を、かわす、かわす、かわす!
もう大分息もあがって、自分でも楽しくなっているのを自覚した頃、それでも僕は一気に覚めた。って言うか冷静になった。いやむしろ逆に一瞬で怒りが爆発した。眼前にいつの間にか復活していたチェコが楽しそうに手を叩いて「何の遊び?」と言うように揺れてりゃそうも思うよね!とりあえず一発殴らせろ。話はそれからだ!
「元凶が何楽しんでんだ!へっこんでろ!」
「に゛っ・・・!」
勢い余って、フライパン技多いな今日はとか思いつつもフライパンクラッシュをお見舞いしてしまった。ちなみにこの技、頭上まで腕をめいっぱい伸ばし、縦にしたフライパンを一気に振り下ろすというだけの単純な技なのだが、当たると結構本気で痛い。クリーンヒットなら目から火花と星と涙が確実に出てくる大技である。っていうか普通は死ぬから、禁断の技として封印しておくべき必殺技だ。まあ頑丈そうだし大丈夫だろうと考えて躊躇なく沈めてみた訳だけど。
「に・・・ひ、酷いですーッ!」
まさかニャーニャー泣きながら飛び出していくとは思わなかったなあ、失敗失敗。
そういえば肝心の人形に訊けば手っ取り早いんじゃないのかと僕が気付いたのはこの数分後で、呪呪まで迷子になっている事に気付いたのはさらに数分後の事になる訳だ。嫌になっちゃうね、本当に。



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パンドラ*ボックス30 [オリジナル小説]

※この小説はフィクションです
 実際の事件、人物、団体とは関係ありません
※この小説には粗暴、下品であるなどの粗悪な描写が含まれます
※この小説には暴力、流血などの残酷な描写が含まれます
 
 以上の注意を踏まえ、それでもよろしいと言う方だけご覧ください
















 

ゴッガガガガガガゴォォン!ひょいっ
「説明していただきたい」
『はい』
綺麗なビブラートが返ってきた。ずいぶん気が合うな、これは中々良いコーラスチームになるんじゃないの?
あんまりイラッときたからつい手元のフライパンで雨音以上に激しいビートを響かせてしまった。1オクターブ低い声で脅しをかければ、チェチェルチェコから兄さん達まで全員姿勢を直して綺麗に並んだ。ふっ、やれやれ困った連中だゼ。・・・それにしても、毎度のおふざけとはいえ、本当に丈夫な家族だ。昨日の騒ぎで出来たであろう傷にも、いくらか包帯とも布切れともつかないものが当てられているのは見て取れたが、思っていたより軽そうなものばかりで、五体満足にぴんぴんしていた。絶対この人達風邪とかひかないんだろうな、馬鹿だしね。
「いやあ、説明も何も聞いた通りなんだがな」
「いやいや、聞いた通りも何もまったく意味不明だから」
悪びれも無く父さんが言った。最奥で大人しくしていた呪呪は別として、1人だけフライパンラッシュビート逃れやがって。つくづく俊敏な中年だよ。もっと衰えろ、せめて年相応に。
「だ・か・ら・僕が御主人様ってどういうこと!?そもそも何で人形がいるの!?それ以前にどうして馴染んでるの!?しかも何かキャラが違わない!?」
「御主人様は御主人様です!キィ様はチェコと呪呪の御主人様ですから!」
「ほーう。とりあえずこの人形の頭がだいぶ足りない事は理解した。何だお前まともになったのは見た目だけか?まるで説明になってないよ。胸張ってみせるな馬鹿」
「・・・!」
「まあまあ、そう畳み掛けてやるなよ。凄い勢いで凹んでるじゃないか」
当たり前だろ、わざとだもん。足元でニャーニャー泣いているチェチェルチェコにさらにイラッときて叩いたり伸ばしたり苛めにかかった。こうしていると本当に昨日と言動が一致しない。一致したらしたで困るが、関係ない奴を腹いせにいじり倒してるようでイマイチすっきりしないな。散々髪をクシャクシャにして、人形の癖に柔らかい頬を伸ばせるだけ伸ばしたところで、さすがに見かねた兄さん達に止められた。
「ほら、そこらで勘弁してやれ。ここはひとつ俺らが順を追って説明してやるから。な?」
最初からそうして欲しかったです、兄さん達。ぱっと手を離すと、バチンと大きな音がした。



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パンドラ*ボックス29 [オリジナル小説]

※この小説はフィクションです
 実際の事件、人物、団体とは関係ありません
※この小説には粗暴、下品であるなどの粗悪な描写が含まれます
※この小説には暴力、流血などの残酷な描写が含まれます
 
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誰かに抱きしめられる夢を見た。夢だと知って悲しくなった。
「・・・雨」
目が覚めるといつもの屋根裏部屋だった。トタン屋根もかくやというボロ屋根を打つ凄まじい勢いの連続轟音は、慣れた人じゃないと雨だとは気付かないだろう。雨というよりむしろ銃撃音に近い。マシンガンってこんな感じか?こりゃもう音の暴力だね。酒場のドラムだってこんなにはしゃがないと思うんだけど。
汚いカーテンを開けて窓――というより穴か――から外を確認しようとして、右手が痛むのを感じた。さすろうと思って伸ばした左手が宙を掴んだときに、まあまあ嫌な予感はしていた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・夢じゃなかったか・・・」
いやまあ分かってましたよ?でもほら僕ララのこと呼んだ時点で「あちゃーいよいよ死ぬわこれ」とか思ってたし、そっから先の記憶ないし、若干の期待は持っても許されるべきだと思ったんだけどなー。ホロズウェルじゃ珍しくないとはいえちょっとショックだよ・・・って僕は誰に何言ってるんだ。
そもそ、どうしてあの状況から助かったんだろう?父さんかな?それとも、サザリさんの自警団?どっちにしろ訊いてみればわかるんだろう。とりあえず、目下の問題は雨と片腕。下の階に降りていきたいんだけど・・・ま、店の時間じゃなさそうだし緊急経路使ってもいっか。よろけつつも立ち上がって、足先で床板を探る。・・・ん、ここか。吸ってー・・・吐いてー・・・気合を入れて一気に踏み抜く!
パカンッ・・・がすっ!
・・・誰か真下にいたな。鈍い音がした。あーっと・・・ご愁傷様です。
「アイタタタタタ・・・な、何なんですこれ!?」
大方父さんか誰かだろうと思っていたのに、響いてきたのは違う声。誰だろう?知らない声じゃないけど・・・常連じゃない。昨日の騒ぎを聞きつけた軍人だったら嫌だ。もっと色々落としてやろうか?さっと悪い考えが頭をよぎったが、それ以上に好奇心が勝った。10馬身差の堂々トップです。決めた、僕は跳ぶ!
「・・・真下のお客様は落下物にご注意くださーい。ワン・ツー・・・スリー!」
「ッ!?ニ゛ャ――ッ!」
「ん?猫踏んだ感触じゃなかったけど・・・」
下を見ると見覚えの無いウェイター姿の男がつぶれていた。オレンジの短髪にメッシュが入っていて、スタイルは上々。割と小奇麗な格好をしていて、ますます知らない相手だし、何より状況が把握できない。思わず父さんたちに救いを求めると、全員こちらを指差してヤバい顔で笑いをこらえていた。その顔は自称オンナとしてどうだろう?・・・いや、1人だけ笑ってないのが入るな。黒い上品なゴシックロリータに身を包んだ黒髪赤目のなかなかの美少女だ。見覚えは・・・ある顔だけど思い出せない。何だ?割と最近のような・・・。
「まさか・・・」
がばっ!
急な浮遊感。真下の男が急に起き上がったせいか!バランスを崩して慌てたが、がっしりとホールドされていたので落ちる事はなかった。
「あの・・・なんか嫌な予感がするんですが・・・父さん?兄さーん?」
感極まったという顔で震えている男から必死で視線をはずしつつ嫌な予感が当たらないように願って尋ねた。結果、その期待は見事に裏切られたが。がっしりと強い力で僕を抱きしめてくる男の声が、間違いなく僕が聞きたくないと思っていたものだったから。
「ようやく・・・ようやくお目覚めになられましたか御主人様ーッ!」
「ぎゃあああああ人形――!?」
「ぶほっ・・・!だあっはっはっはっはっはっはっは!」
「ひーっく、くるし・・・ぶはははははは!」
「ぎゃーっはっはっはっはっはっば・・・げほっげほっウエッ!」
父さん達うるさい!何これ何これいやホント一体全体何がどうして殺人兵器共がここに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ってあれ?御主人様って、僕?



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パンドラ*ボックス28 [オリジナル小説]

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ろくに道順も覚えてない、それも混沌とした秩序のない町で、自分が良く迷わなかったものだ。
断面だけが新しい瓦礫の上を音を立てて歩く。その下でうめく人々も、今は視界に入らない。
「・・・その子を、渡してもらえるかい?」
口から零れた声が思ったよりもずっと優しくて、それがまた可笑しくなった。なんだ、もうすぐ自分の世界は終わってしまうだろうに、何の不安も怒りもない。不思議にフランは笑顔だった。
「・・・ッ!」
「ギャン!」
胸ポケットに入った愛用の黒い万年筆を魔法で手早く鍵に変え、人形達を『リセット』していく。そうだ、この鍵はこの子に残そう。
「・・・すまない・・・すっかり遅くなってしまったね」
淡い光が体を包むのがわかる。暖かい魔力が、フランを零れ落ちてキィに降り注ぐ。腕の中で身じろいだキィの顔色も、ずっと良くなった。
「大きく・・・なったね。もう、重くて抱けないや・・・」
それでも。それでも、落とさないように抱きしめる。あの時はじめて知った事をいまさら思い出した。子供の体は重いんだっけ。でも、ずっと暖かいんだな・・・。もう暖かさなんて感じない体がぬくもりを帯びていく。幸せ、という事はこの暖かさだったのか。何も言わないのに心が満たされていく。
「・・・本当は、もっと色々残してやりたいんだ・・・だけど・・・私は、駄目だな・・・!」
キィの体に水滴が落ちる。自分は泣けたのだろうか。こんな身体でも。こんな、弱い心でも。
「・・・・・・大丈夫、君は・・・綺麗だよ・・・」
身体を包む魔力の光が、もうすっかり小さくなってしまった。できるだけきつく抱き寄せる。どうか最後の一滴まで、この子を癒してくれますように。
目を開けると、涙ぐんだナターシアとガンテツが視界に入った。どちらも息を切らして、持てるだけの炭を持って黒くなっている。閉じてゆく世界の中で、自分は愛されていたのかと他人事のように感じた。ごめんなさいとありがとうとさようならの、どれを言おうか迷って、結局「この子はもう大丈夫です」とだけ言った。「大丈夫」ともう一度繰り返した時に世界が終わった。

古ぼけた舞台上に、フランが立っている。
ゆっくりと中央のスポットライトが消えていく。
フランはふんわり笑って振り向いて暗転する。
拍手もなく、音もなく、フランがゆっくりとはけた。



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パンドラ*ボックス27 [オリジナル小説]

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まだ動いている。動いてはいるが、ここは何処だったろうか。ここはあの日か?それとも今日か。
むせ返って、口内に苦い味が広がるのを感じた。炭だ。何処までもビターでまったく食べられたものじゃない。
「げほっ・・・ガンテツ殿・・・。意外ですね、あなたは私の事が嫌いだと思っていたのに」
「嫌えだよ」
「・・・」
では、なぜ彼がここに?広い荒野で倒れている自分をわざわざ探しにきたのだろう。口の中でじゃり・・・と嫌な感触を残す燃料が、ようやく頭まで回ってきた。回ってきたら、もう走っていた。
「・・・フラン!待ちやがれ!」
――あの子が危ないんだ。遠くに自分を呼び止めるガンテツの声が聞こえた気がした。それすら振り払って、助けてもらった恩もかなぐり捨てて、らしくないと思う余裕もなく、灰色の雲に覆われたホロズウェルシティまで。走れ、走れ、走れ!
怖い。紅と黒と灰色に煙る災厄戦争が頭をよぎった。15年前、フランはあの少女を裏切った。絶対に助けると約束したのに。彼女の為に、ちっぽけな命すら投げ出せなかった。世界が敵に回って、急に怖くなったのか?それは違う。あの時、フランはどうしても彼女を助けられない状況にいた。それは事実だ。
「・・・それでもッ」
それでも、言い訳に逃げるのは嫌なんだ!助けられないくらいなら、あの場で死ぬべきだった!
この15年は、フランにとって地獄でしかなかった。日に日に彼女の記憶が薄れていく。無理に思い出そうとすれば、それは虚像でしかない。笑顔が遠ざかっていく。それは純然たる恐怖だ。どんなに彼女を愛していても、呪いがそれを許さない。あのナターシアだって忘れた。彼女の名前を忘れたくなくて、メモリの色あせない人形になった。パンドラ以外の彼女の本当の名前が呼べるだけで、どれだけ救われた気がしただろう?名前を呼ぶだけで、どれほど胸が満たされただろう。それこそ、何度も何度も歌うように。
ガクン!視界が揺れる。脚部がやられたのか。頬を黒いインクが伝う。私はもう、血を流す事すらできない。
「・・・それでも・・・それでも、私はあの子を救えるじゃないか!」
歌が聞こえる気がした。この声は彼女で、この声はあの子だ。体中の上げる悲鳴は、もうフランには届かない。まっすぐ、そこへ向かう。

――ララ ララ 歌が聞こえる。私は許されるのだろうか?



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パンドラ*ボックス26 [オリジナル小説]

※この小説はフィクションです
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※この小説には暴力、流血などの残酷な描写が含まれます
 
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走馬灯というものを、多分初めて見た。確実に見て、ああこりゃ死んだかな、と他人事のように思った。もういいや、いっそ諦めて、95パーセントがケバいドレス姿の中年に埋め尽くされた思い出に浸ることにしよう。普通の連中には地獄絵図でもキィにとっては中々の幸せな思い出だ。・・・美しくないのは認めるが。
右肘がやけに軽い。目蓋を開ける。呪呪が啜って、チェチェルチェコが貪っているのが見えた。何だ、通りで軽いわけだよ。
もう知るか。僕は眠いんだ。考えるのも嫌になって、走馬灯を追いかけることに専念した。くるくるくるくる場面が変わる。殺風景な街の景色。父さんの事。兄さんとの思い出。ナジャ。サザリさん。地元のゴロツキやロクデナシ。
「・・・さ、ん・・・・・・にぃ、さ・・・・・・・・・・・・ララ」
思い出す。自分の中心を形作るいつか死んだ幼馴染。
ララ。何だ、もう僕はララのところに行ってもいいのか。どうせならララの銃を持っていればよかった。僕は許されるの?
「ララ」
まっすぐに、灰色の空を見つめている。
自分の声が、はっきり聞こえる。
でも、もう駄目なのかな。
頭がぼんやりするんだ。
名前を呼び続ける。
歌うように続ける。
声が遠ざかる。
ララ ララ
ララ

――痛みに揺れる視界の中で、神話の救世主を見た気がした。



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